「無知」と「不理解」が障害者の人権を脅かす 傷害致死罪を認めなかった千葉地裁判決

下記サイト、堀 辰也氏の記事です。
「無知」と「不理解」が障害者の人権を脅かす 傷害致死罪を認めなかった千葉地裁判決

「無知」と「不理解」が障害者の人権を脅かす
傷害致死罪を認めなかった千葉地裁判決


精神科病院内における患者虐待を、まるで認可するかのような裁判判決が言い渡された。石郷岡病院(千葉市中央区)精神科で発生した、入院患者に対する暴行致死事件。傷害致死の疑いで逮捕された元准看護師2人に対し、千葉地方裁判所は3月14日、1人に無罪、もう1人に罰金わずか30万円の支払いを命じる判決を下した。傷害致死罪の訴えを退けた理由について高橋康明裁判長は、「病室のカメラ映像からは暴行を認定できない」と結論づけたが、暴行を認定できるか否か以前に、映像には、入院患者に対する明らかな虐待行為が記録されている。この様子を、裁判長と裁判員5人が『正常な看護行為』と認めたのであれば、もはやこの国に「障害者の尊厳」など存在しない。



両被告の“詭弁”を鵜呑みにした裁判長と裁判員の無知

2012年1月、統合失調症で石郷岡病院精神科に入院していた33歳(当時)の男性患者が、准看護師らの暴行によって頸椎骨折などの重傷を負わされ、その時の怪我による呼吸不全が原因で14年4月下旬に死亡…というのが、事件の概要。今年2月中旬から始まった裁判員裁判では、意図的な暴行か、業務上の偶発的な事故か…が争点の1つとなったが、証拠採用された映像の不鮮明さがネックとなり、「カメラ映像が犯行の裏付けとしては不十分」と判断された。

 確かに映像は低解像度で、しかも不鮮明なものではあった。が、30歳を過ぎた成人男性を、准看護師らが無理やりフローリングの床へ引き倒し、ズボンも履かせずオムツのままで食事を与えたり、両被告と一緒に保護室に入った女性看護師が、替えのオムツを床に放り投げる様子がはっきりと撮影されている。正常な神経を持った人間で、この様子を「介助」と見なす者は、まずいないだろう。

 証人尋問で両被告は、映像中の暴行が指摘される場面に対し、「患者が手で殴ってきたので腹部を膝で押さえた」「足で蹴りつけてきたのでそれを避けるため、顔をまたごうとしている最中、偶発的に足裏が患者の顔に当たった」(要旨)などと述べている。しかし、よく見てみると、“患者が殴ってきた”場面は、膝で腹部に体重をかけられた被害者が、苦しんで持ち上げた手がポンと当たった程度にしか見えず、“足で蹴りつけてきた”場面も、膝で押さえつけられ、苦しくて足をバタつかせているようにしか見えない。そして、“偶発的に足裏が当たった”場面は、当たったと言うより、いったん頭部を蹴った後、狙いをつけて真っ直ぐに踏みつけているように見える。

 天井部に設置されたカメラ映像という性質上、動きの詳細が確認しづらい角度であり、「証拠」としては不十分かもしれないが、それはすなわち、被告の行為の正当性を立証するにも不十分なものということだ。にも関わらず、裁判長と裁判員は、被告1人の暴行の一部は認めたものの、それ以外の行為については両被告の言い分と、一緒に保護室にいた女性看護師の、「(被害者には)突然暴れ出すなどの衝動行為があり、顔を蹴られたと報告を受けた」、「患者が暴れた場合、看護師が患者の体を押さえる行為は普通にある」という証言を鵜呑みにし、検察側の立証を退けた。

 「傷害致死罪」を成立させるのに、映像だけでは不十分だったかもしれない。しかし、主体的に暴行を行った元准看護師に対する「罰金30万円」は、酒に酔って同席していた客を殴り、全治1~2週間程度のケガを負わせた…程度の暴行事件の判決内容だ。首が前傾(硬直?)している状態の入院患者を踏みつけたり蹴ったりして、頸椎骨折させた(もしくはその原因と思われる衝撃を与えた)者に対する量刑ではない。精神科病院における患者に対する暴力・虐待事件が、これまでにいったい何度繰り返されてきたか。その悪しき風習を改めるため、障害者団体や支援団体、こころざしのある精神科医などが、どれだけ努力してきたかを、全く鑑みていない人間の判断としか思えない。


警察署の捜査怠慢が「記憶の風化」を正当化させた

映像の不鮮明さに加え、暴行からかなりの年月が経過していることも、判決の公平性をねじ曲げる一因となっている。それは、判決後に千葉地裁で行われた会見で、裁判員を務めた男性の1人が「5年前の事件で、証人の記憶も風化していて(判断が)難しかった」と語っていたことからも明らかだ。そして、5年も前の出来事だったため、現場に居合わせた女性看護師の、「(カメラ映像を見て)自分がそこにいたのは分かるが、何が起きたか記憶に残っていない」という、おおよそ医療従事者とは思えない証言を認めざるを得ない状況を作り出した。

 不自然に感じた方もおられると思うが、そもそも、被害者が2012年に暴行を受けて重傷を負った事件の裁判が、なぜ2017年まで行われなかったのか。目撃者や状況記録が全く残っていない事案なら、犯罪を立証するための証拠集めが数年がかりになることもあるが、不鮮明ながらも暴行らしき行為が写された映像があり、被害者の診断書もある事件の起訴が5年後というのは、極めて不自然。その原因を作ったのは、警察の捜査怠慢に他ならない。

 暴行の翌日、被害者には下肢麻痺などの異常が見られ、保護室のカメラで動いていない様子が確認されたにも関わらず、石郷岡病院は適切な処置を一切行わなかった。そして暴行の2日後、被害者は千葉大学病院へ救急搬送され、その翌日には頚椎骨折による頸部腫脹により、一時は心肺停止状態にまで陥っている。

 その段階で被害者家族は、大学病院が出した頚椎骨折の診断書を添え、千葉県警千葉中央署に通報を行った。ところが、警察が実質的な捜査を始め、暴行に関わった准看護師2人を傷害致死の疑いで逮捕したのは、通報から3年数ヵ月が経ち、被害者死亡からも1年以上が経過した15年7月である。仮にこれが一般の病院で、暴行を受けたのが精神障害者でなければ、警察は容疑者逮捕を3年数ヵ月も放置しただろうか。

 一部報道によると、警察は同事件が全国紙に連載記事として取り上げられ、暴行時の映像が複数の動画共有サイトで配信されるようになって、ようやく重い腰を上げたのだという。結局、知的障害者や精神障害者に対する偏見と蔑視が捜査開始を遅らせ、それが「記憶の風化」という言い訳を正当化させ、今回の極めて理不尽な判決に結び付いたのではないか。


必要以上に過激な「業務行為」を上級裁はどう裁くのか


09年末、内閣府は『障がい者制度改革推進本部』を設立し、「こころのバリアフリー」「障害者が安心して暮らしていける社会の実現」に向けた動きが、ようやく盛んになり始めている。しかし、一部の精神科病院による患者への暴力・虐待事件は依然として発生しており、報道されていないものまで含めると、その件数は1990年代からほとんど変わっていない…とする指摘も聞かれる。

 つい先日(3月20日)、厚生労働省が発表した集計によると、精神科病院での強制的な身体拘束や施錠室への隔離件数が、2014年度は過去最多を更新したという。隔離に関しては調査開始の98年度以来、初の1万人超えとなったそうだ。不穏状態や攻撃的な状態の患者の自傷他害を防ぐため、一時的な身体拘束や隔離が必要になることは確かにある。着替えなどの介助を行う際、患者が異常な興奮状態にあれば、力の強い男性職員が覆い被さるようにして患者の身動きを抑えることも、決して珍しいことではない。しかし、それがエスカレートして暴力や虐待になれば、明らかな犯罪行為であり、法をもって裁くのが当然であろう。

 石郷岡病院事件の裁判判決は、『疑わしきは罰せず』の原則に偏り過ぎている。証拠映像だけでは傷害致死を認められなかったにせよ、決して攻撃的な動きはしていない患者に対し、必要以上に乱暴な“業務上の行為”を行っている元准看護師2人に対し、傷害罪の判決を下すことは可能だったはずだ。今回の判決を受け、死亡した被害者の父親は「到底納得できない。検察官には控訴するよう強く求める」とコメントしており、千葉地検の次席検事も「判決内容を精査し、適切に対処したい」と述べている。今回の判決が、上級裁でどのように扱われるかは、我が国における障害者の人権が、今後どのように扱われるかを示唆することになるだろう。





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gunter75

Author:gunter75
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●プロフ画像は、弟が薬剤性ジストニアになったあと、友人たちがリレーで色紙を書いてくださり、お見舞いの時にいただいたものです。



●医療法人 石郷岡病院を許しません!!
絶対に諦めません!!(2015/12/31現在、病院からの説明・謝罪等は一切ありません。2012/1/4以来全く接触もありません)


●事件の流れ
2012/1/1石郷岡病院の2准看護師が弟を暴行→1/2朝には病院側は異変に気づきながらも放置。診察もしていないのにも関わらずカルテに「著変なし」、1/3昼過ぎ救急搬送→1/4一時心肺停止するも蘇生→2014/4/28療養先の病院で息を引き取る→2014/4千葉県警千葉中央署捜査第一課捜査開始→2015/7/8石郷岡病院の暴行した2准看護師逮捕→2017/3/14 千葉地裁(高橋康明裁判長)は、正当な医療行為として田中氏無罪、菅原被告に罰金30万の不当判決(公訴時効成立の暴行罪)を下した→3/28検察が控訴

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