石郷岡病院 裁判 看護師の意見書 part1

石郷岡病院との裁判で、精神科看護師から意見書をいただきましたので掲載いたします。
弟の件のみならず、実際に現場で実践されている精神科病棟でのケアについて大変参考になると思います。


長い文章なので2回に分けて掲載いたします。


※固有名詞等は伏せさせていただきます。
(大きな文字で強調されている部分は当方の判断です)






                           意見書


                                        
1.経歴、専門等

私、◯◯は、19☓☓年に看護助手として医療法人◯◯病院に就職し、19☓☓年に准看護師、19☓☓年に看護師資格を取得し、30年精神科病棟および外来で勤務しています。◯◯病院は大阪府にある221床を有する精神科・神経科の病院であり、私は今年2月まで、保護室が6床ある「精神科急性期治療病棟」で5年間病棟勤務をしていました。
夜勤も含め、日常的に入院する精神疾患患者さんの看護にあたり、隔離・身体拘束中の患者さんのケアや、精神科集団療法としてのミーティングや家族への心理教育に携わっています。
また、病院内の人権委員会、サービス向上委員会の担当の他、厚生労働省が推奨する「包括的暴力防止プログラム(Comprehensive Violence Prevention and Protection Program:CVPPP)」① の認定トレーナーとして、院内で危機予防研修を担当しており、暴力的な場面や隔離・身体拘束で、暴行を回避し、双方が傷つくことがないよう安全にケアする手法について始動を行っています。
さらに、精神科入院患者への権利擁護活動を行う、NPO法人大阪精神医療人権センター電話相談員を務め、大阪府療養環境サポーターとして、大阪府下の精神病院へのオンブズマン活動をしています。 ②
今回、◯◯陽さん(以下、単に「◯◯さん」という)が、平成24年1月1日に病棟看護師から頭部を足で踏まれた行為(以下、「本件行為」といいます)について、下記の通り意見を申し述べます。



① 精神医療の領域において発生する興奮や攻撃、暴力に対し、医療職が被害者にも加害者にもならないよう、専門的な知識や技術を基に包括的に対処できる技能の習得プログラムである(甲B4)。講義と実技からなる全4日間のプログラムで包括的暴力防止プログラム認定委員会の下で、認定トレーナーの要請で行われる。日本精神科看護技術協会主催の講習会ほか、多数の国立、私立の精神科病院でも病院単位で講習会が行われている(甲B5)



② 大阪精神医療人権センターは宇都宮病院事件をきっかけに精神障害者を人権侵害から救済することを目的に設立された団体であり、2003年には大阪府から委託を受けて精神医療オンブズマン制度を実施している。なお宇都宮病院事件とは1983年4月に宇都宮市の精神科病院で、食事のないように不満を漏らした入院患者が看護職員らに金属パイプを用いた暴行を加えられ死亡し、同年12月にも退院を訴えた別の患者が職員らに殴られて死亡したことが、入院患者の新聞への投稿によって明らかになった事件である。この事件により、院長を含める医療職員5人が有罪判決を受け、精神保健法制定のきっかけとなった。







2.ジストニアについて

ジストニア(あるいはジスキネジア)は、向精神薬の副作用として精神科薬剤の文献には必ず記載されているものであり、精神科で働く看護師が必ず知っておくべき知識です。
症状も重いことから、副作用の中でも重大な項目として指摘されており、精神科で働く看護師が知らないというのは、よほど基礎知識を欠いていると言わざるを得ません。厚生労働省の行っている重篤副作用総合対策事業 ③ においても、薬剤性のジスキネジアは重篤副作用疾患として取り上げられています。なお、厚生労働省の向精神薬の「重篤副作用疾患別マニュアル ジスキネジア」によれば、ジストニアとは、「持続的に筋肉が収縮する運動であり、ある特定の肢位を維持し続ける様になる」とされています。
看護師がジストニアの診断をするものではありませんが、精神科病院入院患者にはしばしばみられる症状でもあり、筋肉の緊張、収縮が持続して不自然な動きを続けている場合、当然その可能性を疑うものです。◯◯さんの場合、2011年9月より入院中なので、病棟看護師が「首が曲がっているのはわかったけど、ジストニアとは知らなかった」などということは、患者さんの心身の安全を守り、回復を図る看護師として、患者情報の確認が不十分であったと言わざるを得ません。患者さんが他者の視線のない場面でも下を向き続けるなどを見れば、看護師としては、ジストニアなどの問題を抱えていると考えるのが当然です。万が一、ジストニアに思い至らなかったとしても、頸部の前屈のある患者さんは、何らかの身体的トラブル、筋肉の萎縮や硬直、頸部の頚椎症(骨の変形で神経を圧迫している)、神経障害を抱えていると考えることが必要です。さらに、長期にわたり不自然な姿勢を続けていると、骨の変形をきたしている可能性も考えるべきです。
患部である可能性がある部位に強い圧迫や打撃を加えるというのは、看護として極めて不適切で、医療安全の上でも不適切な行為です。
以上のように全身状態を常に観察する看護師としては「首が曲がっているのはわかったけど、ジストニアだとは知らなかった」という言い訳は通用しないものです。




③ 平成17年から厚労省が行っている事業であり、医薬品の使用により発生する副作用疾患に着目した対策整備を行うとともに、副作用発生機序解明研究等を推進することにより、従来の事後対応型から「予測・予防型」安全対策への転換を図ることを目的とするものである(甲B6)






3.
日本の精神医療の現状

欧米諸国など他の多くの国においては、強制入院、隔離・身体拘束などの行動制限は、人権侵害とならぬよう、医療機関に対して厳しく基準を定めています。アメリカの多くの州では、隔離や身体拘束の場合、3日以内に裁判所に書類を提出する、隔離室のドアの前に常時スタッフが居て、行動制限の必要性の評価を評価することが定められています。また、強制入院や処遇への不服申立てがあれば、数日以内に裁判所や監督機関が病院に出向いて、権利擁護者のつきそいのもと、入院者本人、主治医の意見を聞いて判定するなどの制度があります。
イギリスでは、精神病院において、日中は常時、人権機関から権利擁護者が常駐しており、何時でも処遇などについて相談することが可能で、退院請求は2割が認められるという実績があります。これは、長い精神保健医療の歴史の中で、閉鎖病棟など外部の目に触れにくい閉鎖環境においては、医療従事者と患者の間の支配構造が固定化し、不必要な拘束や虐待が横行することが明らかとなり、外部の監視機能を強化する必要があることが自覚されてきたからです。
日本においても、閉鎖病棟における違法、または不適当な処遇、行動制限が行われてきた歴史があることは、別紙{精神科で発覚した主な問題事件」からも明らかです。
しかし、日本の強制入院である医療保護入院に関しては、裁判所等の医療から独立した監視機構は整備されておらず、精神医療審査会があるものの、都道府県の担当者は15~25名程度で、予算も人数も足りず、実際には形式的書類審査しか行わず、99%以上が認められるという状態であり、未だに、非常に不十分な監督状況であると言わざるを得ません。
今回の◯◯さんへの暴力的行為と重大な障害を負うにいたる背景には、閉鎖病院内での身体拘束・隔離に対する監視が不十分な日本の精神医療政策の問題があります。この裁判は、閉鎖病棟の中での事件について、証拠を伴って表面化した数少ない事案です。裁判所には、証拠を精査した上で、患者の権利擁護という観点から閉鎖的な精神科医療を審査する役割が期待されているとも言えます。






4.問題となっている行為について

本件行為については、保護室に設置されていた監視カメラの映像をダビングした映像を拝見しました。


(1)カメラから認められる内容
時系列で見ると、まず、長時間にわたり、◯◯さんがうずくまっていることが認められます。その間、動き回るわけでもなく、叫んでいるようにもみえず、精神症状としての「不穏」「多動」や「衝動性」は、見られていません。
その後、16:08に4名の看護師が保護室に入り、食事介助を行った後に2名が退出します。16:12には、2名の男性看護師がオシメを装着し、その後16:13には、ズボンをあげようとして◯◯さんが足をばたつかせていることが認められます。
そして、16:14に、背の高い男性看護師が◯◯さんの頭を二回踏みつけていることが確認できます。
頭部を踏みつけられた後、◯◯さんは首に手を回して、頸部を抑えています。その後、もう一人の男性看護師が上半身を押さえつけ、背の高い男性看護師がオシメを交換しています。その際、上半身を押さえた男性看護師が膝あるいは下腿部で◯◯さんの頭部を押さえつけて動きを制限させているように見えます。





(2)看護師としての意見
ア.食事介助・オシメ交換について
坐ることのできる人を、あえて寝かせたまま食事をとらせることは通常ありえません。臥位での食事は誤嚥のリスクが大きく、誤嚥性肺炎を引き起こしやすいからです。座位がとれない患者さんには、ベッドをギャッジアップして頭部を高くするなどして、できるだけ座位に近い姿勢で食事をとってもらいます。さらに、マットも布団も敷かずに、寝かせて流動食品で食事を介助するなど、患者へのケアと言えず、家畜への強制食餌の様です。また、寝かせたままでの食事介助と並行して、オシメの交換を行っています。これは患者にとってはトイレで食事を強制されることとかわりありません。ケアでは食事と排泄の介助は時間をずらすか、場所を変えておこないます。
通常、オシメの交換はベッドの上で、ベッドを使用していなければマット、布団の上で行います。床の上に直接寝かせて食事をとらせる、オシメの交換をすることは、患者に背部及び患部である頸部の痛みを伴うとともに、非人間的な取り扱いをされたことで、患者に屈辱感を与えるものであり、看護行為として極めて不適切な行為です。患者の尊厳を配慮しない病院スタッフの姿勢がみてとれます。
患者が、オシメ交換、食事介助のケアに際して、不安や恐怖感が強くなっている、あるいは興奮しやすい場合にには、まず、見下ろすような位置関係は避けて、低く、できるだけ同じか、より低い視線の高さで、やさしい口調でこれからケアする内容、その必要性を説明し了解を求めるようにします。抵抗がなければ押さえつける必要はありません。
どうしても身体を抑える必要があるなら、安全に抑えられるだけの看護の人手を集めます。頸部、頭部は避け、上肢や肩、下肢を握ることで対応します。先述したCVPPPの手法では、頭部は必ずスタッフの手で保持します。足では保持が不確実でありかえって危険です。また屈辱感を与えやすく、強い抵抗を引きだしやすいものです。患者が起き上がって抵抗が強い場合は、ケアの説明をしながら理解と同意を求め、手を握り、肩を手で押さえるなどして、不安感を与えず、安楽にオシメ交換が可能な姿勢を確保するのが当然です。
保護室のモニター上では◯◯さんは、長時間にわたって、じっとしゃがみ込んでおり、歩き回る、壁や寝具を蹴るなどの行為は見られず、不穏状態にはみえません。このように、抵抗もしていない患者さんに対し、寝具やマットの上に寝かさず一方的な食事介助、押さえつけてのオシメ交換は不適切であると言わざるを得ません。
ましてや◯◯さんの場合には、頸部ジストニアがあり、(普段頸部を起こすことは、頸部の神経根を圧迫して強い苦痛を与えることが考えられます。このような場合には、枕を頭部下に充てるなどして負担の軽減をはかるのが通常です。





IMG_3716.jpg

我が家のバラ(ベンジャミン・ブリテン)






プロフィール

gunter75

Author:gunter75
このブログは姉である【私個人】がやっています。



●プロフ画像は、弟が薬剤性ジストニアになったあと、友人たちがリレーで色紙を書いてくださり、お見舞いの時にいただいたものです。



●医療法人 石郷岡病院を許しません!!
絶対に諦めません!!(2015/12/31現在、病院からの説明・謝罪等は一切ありません。2012/1/4以来全く接触もありません)


●事件の流れ
2012/1/1石郷岡病院の2准看護師が弟を暴行→1/2朝には病院側は異変に気づきながらも放置。診察もしていないのにも関わらずカルテに「著変なし」、1/3昼過ぎ救急搬送→1/4一時心肺停止するも蘇生→2014/4/28療養先の病院で息を引き取る→2014/4千葉県警千葉中央署捜査第一課捜査開始→2015/7/8石郷岡病院の暴行した2准看護師逮捕→2017/3/14 千葉地裁(高橋康明裁判長)は、正当な医療行為として田中氏無罪、菅原被告に罰金30万の不当判決(公訴時効成立の暴行罪)を下した→3/28検察が控訴

石郷岡事件・経緯←クリックすると経緯の記事を表示します




※拡散以外の目的で文章及び画像等を使用することは固くお断りいたします(個人様のブログ等で精神科への問題提起等のために使用することはOKです)
その際、当ブログのURLを貼っていただければ幸いです。

また、営利目的、金銭の絡む事案及びプロパガンダ目的での文章の利用・引用等もお断りいたします。


※当方は、いかなる団体にも属しておりません。

現在コメント停止中です

最新コメント

カウンター

フリーエリア

フリーエリア

Flag Counter

フリーエリア

検索フォーム

QRコード

QR